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Nuzzellaに別注オーダーした自然派ワインの話

この夏、NAUTICAは加藤農園とSTACKSの協力のもと、自然派ワインのイベントを開催します。NAUTICAと自然派ワイン。突飛な組み合わせに感じますが、実はそこにはストリートマインドという共通点があって……というのが今回のお話。NAUTICAが別注オーダーしたワイン〈Nuzzella〉のディストリビューターである豊島株式会社の西村卓也さんをゲストに迎え、加藤農園の加藤忠幸さん、STACKSの山下丸郎さん、ディレクターの長谷川昭雄さんが、奥深き自然派ワインの世界に迫ります。

西村卓也

豊島株式会社、勤続31年。香港駐在員時代、出張で訪れたパリでワインに開眼。以来、自らの身をもって、ワインの知識を深める。その後ミラノ駐在員時代に自然派ワインに触れ、ついには自然派ワインの卸事業〈SERVIN〉を社内で立ち上げる。

加藤忠幸

鎌倉野菜を生産する加藤農園の4代目。有機農業に軸足を置き、自家栽培された野菜や生花を鎌倉市農協連即売所(通称レンバイ)で販売する。日々農作業に取り組みつつ、勤務するセレクトショップではディレクターとして活躍。

山下丸郎

フリーランスの編集者、PR、ブックディレクターを経て、ブックレーベル〈STACKS〉を設立。世界中のアート表現を書籍やジン、アパレルなのメディアを通じて発表する。8月には実店舗となるSTACKS BOOKSTOREを渋谷神山町にオープン。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。雑誌『MONOCLE』や『POPEYE』のファッションディレクターを歴任後、フイナムとともにウェブメディア『AH.H』を立ち上げる。2020年〈NAUTICA〉のクリエイションディレクターに就任。

イタリア・エトナ山の東側、標高500mの素晴らしい景色に囲まれたワイナリー〈Nuzzella〉。有機農法にこだわり、ぶどうの栽培から醸造、ボトリングまでを一貫して行う。画像は、今回〈NAUTICA〉が〈Nuzzella〉に別注オーダーした3種の自然派ワイン。

〈Nuzzella〉の自然派ワインについて触れる前に、基本的なことをお尋ねします。よくナチュールワインやオーガニックワインという呼び名を耳にしますが、その定義を教えてもらえますか?

ぶどうの栽培に対して農薬と化学肥料を使っていなければ、オーガニックワインとなります。ですので、SO2と呼ばれる酸化防止剤が(1ℓあたり)100mg入っていようが、ぶどうを育てるときに農薬は使っていませんよ、ということであれば、オーガニックワインと名乗れることになります。

なるほど。ではナチュールワインは、どういう定義付けがされているのですか?

ナチュールワイン、つまり“ヴァン・ナチュール”については、これまで明確な定義がなかったんですよね。それで今年の3月にフランスが「農薬を使わない」「野生酵母で作る」「SO2(酸化防止剤)は1ℓあたり30mgまで」という基準をクリアした場合に、“ヴァン・メソッド・ナチュール”という呼び名にしましょう、というルールを設けて、その認証を示すステッカーが作られました。

今年の話なんですね。それは意外でした。

認証制度が定められたものの、自然派のワインの作り手は変わり者が多いと申しますか、いわゆるアウトロー的な人間が多いものですから、従う/従わないはまた別の話になります。作り手からすると「お宅の認証なんか要らないよ。俺はただ作りたいものを作るから」というワイナリーが多いのが実情ですね。有名なワイナリーですら「参加するつもりはない」と言ってますからね。

その感覚ってストリートっぽいですね。

たしかに。その話だけでつい惹かれてしまいそうです。

今回の〈Nuzzella〉のワインについても、その認証基準に沿った作り方ではないので、一般的にはビオワイン。または自然派ワインとなりますね。

どの部分が基準を満たしていないのですか?

SO2ですね。1ℓあたり50mg近く入っていますので。

SO2が入っていないワインはないんですか?

入れてなくても、入ってしまうんですよ。

え、どういうことでしょうか?

SO2は硫黄に酸素が結合して生成される物質で、ワインの中でも自然発生します。なので、作り手が全く添加していません、と言っても、測ってみるとSO2が入っています。ですからルール自体が非常に曖昧なんですよね。

たしかにモヤモヤしますね。

今回のルールでは、SO2の量を(1ℓあたり)30mgを基準としましたが、安いワインは100mg以上入ってますからね。冒頭でお話した通り、SO2が150mg入ってようが、200mg入ってようが、無農薬でブドウを栽培さえしていれば、それはオーガニックワインとなります。

ジャスミンやタイムの爽やかな香りとミネラル感のあるフルーティーな味わいが楽しめる白ワイン。エチケットのデザインは、グラフィティアーティストのDISKさんが手がけた。3,740円

長谷川さんが自然派ワインに興味を持ったのは、どういうきっかけからですか?

昔、アヒルストア(自然派ワインを扱うビストロ)によく行ってて、そこで出てくるワインが美味しいなと思ってて。でも別にそのときは自然派ワインにこだわっていたわけではなくて、セブンイレブンで売っているワインとかも普通に飲んでたんだけど、だんだん歳取ってきて、やっぱ自然派ワインは全然別物だわ、と思い始めて、最近はそればっか飲んでる。

以前、1日1本空けていると言ってましたね。

そうだね。すぐ飲まないと味が落ちるんじゃないかって心配してるうちに一本飲んでしまうんだ。二日酔いにならないしね。でも、健康が心配だから、最近は半分くらいにするようにしてる。

加藤さんはいかがですか? ワイン召し上がります?

ワインよりかはサワー派ですね(笑)。でも出張でナパに行ったときに、「知り合いが働いているとこのワインだから持ってけよ」と言われて渡されたのが、フランシス・コッポラがやっているワイナリーのワインで。それを家に持って帰ったら、カミさんがスゲー喜んだんですよ。それ以来、出張でカリフォルニアに行くたびにワイン買って帰るようにしていますね。

奥様思いですね!

あと市場で野菜を売っているときも、業者の方とワインの話題になることがよくあるので、もうちょっとワインに詳しくなりたいなーと思ってはいるんですが、ついついサワーに手が伸びてしまって(笑)。

一同笑

山下さんはどうでしょう?

自分はお酒全般好きなんで、ワインも飲みますね。でもあまり詳しくないので、オススメされたものを飲むことが多いです。ニューヨークの友達なんかは、ワインのエチケットの記録アプリを使っていて、それでオススメを教えてくれます。

あーあるよね。忘備録として俺も使ってた。

ワインに興味はあるのですが、日本酒に強い酒屋さんが近くにあるので、日本酒を飲むことが多いですね。

日本酒は飲みすぎるとヤバイことになっちゃうことがあるよね。そういう意味でもワインは丁度良い。1本あけても日本酒みたいにはならないから。

そういえば、自然派ワインで変な酔い方になることはありませんね。

それはSO2が関係していますね。SO2の量が少なければ、翌日の頭痛を軽減させることが科学的に実証されていますから。

ということは、あの頭痛の原因はSO2だったんですね。

そうですね。自然派ワインとケミカル系のワインでは全然違いますよ。

そういえば、ドライフルーツにはSO2がたっぷり入っているから、自然派ワインとの組み合わせは良くない、という話を聞いたことがあります。

せっかく自然派ワインを飲んでいるのに、ケミカルどっさりのワインを飲んでいるのと一緒だよ、という話ですね。酒の席のちょっとしたジョークで言われます。

ということはドライフルーツをツマミに飲んでいると、二日酔いがヒドかったりするんですかね?

はい。それはあると思います。

えーそれは知らなかったです。

フランボワーズのような赤系果実の香りが華やかに香り、口に含むとミネラル感と塩味が感じられるロゼワイン。エチケットのデザインは、アーティストのIMONさんが手がけた。3,740円

そもそもナチュールワインが作られたのはいつ頃のことなんですか?

逆に言うと、ワインの歴史って紀元前まで遡るんですよね。ジョージアとかギリシャでは自然な製法で作られていたわけですから。

あ、なるほど。そうですよね。

19世紀の後半にフィロキセラというアブラムシがブドウを食い荒らす伝染病が流行り、ヨーロッパ中のブドウが死んでしまうということがありまして。そのときからブドウを守るために、農薬が使われるようになったんですよね。だから現在のケミカル系ワインは、ここ150年ぐらいの歴史なんですよね。

ワインの長い歴史のなかでは、ケミカル系ワインの歴史はうんと浅いんですね。

その流れのなかで、薬品に頼らない自然と向き合う生産者がワインを元の状態に戻した、というのが、昨今の自然派ワイン志向です。

その自然回帰的なムーブメントはいつ頃から始まったのですか?

90年代ですかね。今、自然派ワインの世界で崇められているフィリップ・パカレもその頃から作り始めています。その当時の自然派ワインは「土臭い」とか「ビオ臭がある」と言われていましたが、最近はあまり言われなくなりました。それが何故かというと、農薬を使わなくなったので、土壌が健康になっているんですよね。

加藤さん、深く頷いていらっしゃいますね。畑の話は加藤さんの野菜作りとも通じる部分がありますか?

そうですね。さっきアブラムシの話がありましたが、アブラムシって知らないうちに湧いちゃうんですよ。一回土がやられちゃうと、ネコブと言って土壌を洗浄しなくちゃいけないんですよね。そうすると、しばらくは野菜が作れないですね。土を休ませてあげないといけないので。

加藤さんは服を作りながら、そういう悩みを抱えながら生きているんですね。

そうですね(笑)。まぁでも野菜が出来ないのは仕方ねえなって思うんですけど、野菜が売れないのは本当に辛いですね。うちは市場出しなんで、帰りのトラックに荷が残っていたりすると、超ヘコんでいます(笑)。

でも加藤さんの野菜は本当に美味しいですよね。LAで食べたサラダみたいに、ひとつひとつ野菜の味がきちんとあって、サラダという料理として成立している。日本でああいう野菜はなかなか食べられないですよね。

うちはハウス栽培ではなくて、基本的に露地栽培なんですよ。だから野菜が大きくなるまですごく時間がかかるんですけど、土にいる時間が長い分、クセがある野菜に育つんですよ。パンチがあり過ぎて、苦手な人もいますけど。

そんな人いるんですね。

あと持ちが違いますね。路地の野菜は長持ちするんですよ。

やっぱり自然本来の環境で育てることが大事なんですね。

自然なものが良いんじゃない?っていう風潮は、野菜を売っていても感じますね。うちは普通よりデカい野菜とか、ちょっと変な形の野菜も普通に売るんですよ。最近はそういう野菜を買ってくれるお客さんも多くなりましたね。「見た目が悪いだけで、味は美味しいよ」って言ってくれて。

そうなんですね。

自然派ワインと同じようなことが農家でも起きているんですよね。

フローラルの香りとナッツのような風味、スッキリとした酸味と果実味が感じる赤ワイン。エチケットのデザインは、アーティストのZEDZさんが手がけた。3,740円

自然派ワインの扱いについて気をつけておくべきことはありますか?

ベストは13-15℃で管理してください。セラーがあると良いですが、なければ冷蔵庫に入れていただければと。

それは赤もですか?

はい。自然派ワインは熱に弱いので、赤も冷やしてあげた方が良いですね。ワインの劣化はよくあることですが、自然派ワインはそれがてきめんに出やすいんですよ。

となると、今の時期は特に慎重に扱った方が良いですね。

そうですね。このロゼは透明ボトルなので、コンディションが比較的悪くなりがちなところがあります。やはり黒いボトルの方が安定するんですよね。

なんでロゼワインやオレンジワインは透明のボトルが多いんですか?

たしかに。黒くした方が良いんじゃないですか?

そこは作り手の好みになるかと。

ボトルのデザインもそうですが、自然派ワインはエチケットも個性的なデザインが多いですよね。

そうですね。本来エチケットは、ブドウの品種を明記しないといけないとか、地域を入れないといけないとか、細かい表記ルールが定められています。地域の認定を受けるには、そういった決まりごとを守らないといけないんですが、「そんな認定なんて要らないよ」という連中は、自由で好きなようにデザインしているんですよね。

そこにもストリートマインドを感じますね。

ですね。

うん。本当そうだね。

〈Nuzzulla〉と同じエトナには、〈MAGMA〉という有名な自然派ワインがあるんですけど、ボトルに縦書きで“MAGMA”と書いているだけのデザインなんですよね。かなりカルトなワインで、1本30,000円ぐらいするんですが。

それは美味しいんですか?。

かなり変態な味でした(笑)。乳酸菌を飲んでいるような酸味があるんですけど、30分たったら全部それがなくなって。

へー。

味だけではなく、ボトルやエチケットのデザインを楽しむのも自然派ワインの醍醐味なのかもしれないですね。

そうですね。「これがやりたいんだ!」という個性が感じられるものが多いですからね。

今回〈Nuzzulla〉のワインのエチケットをデザインさせてもらったのですが、よく無理を聞いてくれましたよね。

うん、ワインの顔だからね。普通はあんまり良い気持ちはしないよね。

このワインの作り手は、どんな方々なんですか?

家族経営のワイナリーで、責任者はまだ30代ですかね。非常に気のいい人間です。

じゃないと、こんなオファーを受けてくれないよね。

彼らもそういうノリみたいなところは分かってくれたんだと思います。

それは良かったです。

うん。だとしたら嬉しいよね。

自然派ワインイベントのお知らせ

イベントはWeek1とWeek2の二本立てで開催します。Week1ではSTACKSのサポートで、ワインのエチケットをデザインした3人のアーティストの作品を展示・販売します。翌週行われるWeek2では、加藤農園で収穫した鎌倉野菜にくわえ、この日のために制作したスペシャルアイテムをご用意。イベントはどちらも、渋谷神山町にオープンしたSTACKS BOOKSTOREで開催します。

 

【自然派ワインと鎌倉野菜とストリートアート Week1】

■日時

8月27日(金)15:00-20:00

8月28日(土)13:00-19:00

8月29日(日)13:00-19:00

 

■場所

STACKS BOOKSTORE

(東京都渋谷区神山町42-2 神山Mビル2F)

 

自然派ワイン3種の他、エチケットのアートワークをあしらったTシャツ3種、ワインの持ち運びに便利なエアキャップバッグ、さらに作品を提供してくれたアーティストによるジンや原画、ブックカバーを販売します。

*Week1で販売を予定しておりましたブックカバーは納品の遅延により、Week1では予約販売とさせて頂きます。

Week2では予定通り販売させて頂きます。

大変申し訳ございません。

 

 

【自然派ワインと鎌倉野菜とストリートアート Week2】

■日時

9月4日(土)13:00-19:00

9月5日(日)13:00-19:00

 

■場所

STACKS BOOKSTORE

(東京都渋谷区神山町42-2 神山Mビル2F)

 

Week1で販売したワインやTシャツ、ブックカバーなどのアイテムにくわえ(*1)、コンビニ袋風のポリエステルバッグ、さらに加藤農園で収穫した鎌倉野菜をご用意します。

 

<新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止あるいは延期の可能性があります。予めご了承くださいませ>

 

*1 商品は限りがあります。Week1で販売分が終了した商品については、Week2での販売はございません。