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TOO BIGシリーズのシャツの話。

前回のMAGAZINEで予告した〈TOO BIG〉シリーズ。その第一弾としてシャツをリリースします。大きいシャツというと、今ではあちこちで見かけますが、そこには見落とされがちなポイントがある、と長谷川さんは言います。その言葉の意味とはなにか? 大きいシャツをめぐる問題点に迫ってみます。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。雑誌『MONOCLE』や『POPEYE』のファッションディレクターを歴任後、フイナムとともにウェブメディア『AH.H』を立ち上げる。2020年〈NAUTICA〉のクリエイションディレクターに就任。

まず初めに〈TOO BIG〉シリーズを作ろうと思ったきっかけから教えてください。

〈NAUTICA〉のプロジェクトに参加するにあたり、いわゆる“90sストリート”みたいなものに囚われるのは良くないと思ったんだ。枝分かれした先にカジュアルやストリートがあるとしても、軸足はアメリカントラッドに置いた方がいいんじゃないかって。

元々、ヨット文化を背景にしたアメリカントラッドのブランドですからね。

だから、まずはシャツとかチノとかベーシックなものを作ったんだ。トラッドやプレッピーに着るとしても、ゆとりがあった方がいいから、インラインのものも少し大きい作りにしている。

それに対して、今回の〈TOO BIG〉は、2XL、3XLのサイズ感で作られていますね。

うん。普通にデカイよ。

長谷川さんは昔から大きい服を選んでいますよね。

「それデカイでしょ」って散々言われたけど、さすがに最近は言われなくなってきたな。あと以前は大きいものが全然なかったけど、今は普通に買えるようになったから、それはありがたいね。

その分、ちょっと違うんだよな、と感じる服も増えたんじゃないですか?

そうだね。デザイナーズのものは、なんか不自然だったりする。その点、アメリカの大きいものは、作りが自然なんだよね。丈の長さとかカマ(アームホールの下部)の下げ具合とか。やっぱり俺はあの感じが好きだな。

自然なものと不自然なものがある、と?

そう。アメリカのメイシーズとかに行くと、トールサイズ(着丈を長くしたもの)や、XBサイズ(身幅が広く、着丈を短くしたもの)が売っているんだけど、シルエットをアレンジしても嘘くさくないんだよね。

つまり自然な大きさになっているんですね。

きっと大衆にとって常識の範囲の設計みたいなものがあって、それを大きく着ることで、黄金比のようなものが生まれるんだと思う。

なるほど。では、大きいシャツにおける自然・不自然は、どういったところから生まれるのでしょうか?

全体のバランスだと思うんだけど、特にカマの深さが重要なんじゃないかな。

今回の〈TOO BIG〉では、インラインのものに比べて、カマを深く、そして袖を太くしたのは、そういう狙いがあったんですね。

そう。他をどんなに大きくしても、脇下の溜まりがないと大きい気がしないからね。

大きなフォルムをかたち作る上で重要なのが素材です。生地はインラインのシャツと同じく、無地のブロードとストライプのブロード、そしてデニム地の3種類があります。

 

なかでも無地ブロードの生地の感じがいいね。触り心地がすごくいい。

 

タイプライターみたいですよね。

 

うん。ハリがあるから大きい感じが出るね。

 

そしてストライプも打ち込みがいいので、それなりにハリがあります。

 

ペタっとしていないよね。ふわっとした形がちゃんと出ている。

 

生地が柔らかすぎると、フォルムが出ないですよね。

 

よっぽど大きくしないとダメかもね。ハリがあればそれなりになるんだけど、やっぱりカマが深くないとね。

 

やっぱりカマですか。

デザイナーはカマを下げることに抵抗があるのか、なかなか下げてくれないんだよね。服を作るときに「どのぐらいカマを下げます?」って聞かれることがあるんだけど、「10センチですかね」とか言うと、ビックリされるもん。

 

皆さん、躊躇するんですね。

 

経験として、アメリカの大きい服を着ていないと難しいのかもね。

身幅をとって、肩をドロップさせて、ハイ終わり、みたいな服もありますよね。

デザイナーズに多いよね。「これ大きいですよ」と言われて着てみるんだけど、全然大きく感じなかったりする。それはカマを下げていないからなんだよね。でも80年代のデザイナーズは違っていて、アームも含めてデカかったりする。

当時はそれが普通だったんですかね。

〈NAUTICA〉のアーカイブもすごいよ。カマが下がりまくってて、胴の部分が全然なかったりする。

とすると〈TOO BIG〉 は、〈NAUTICA〉のDNAを受け継ぐアイテムなのかもしれないですね。

そうなのかもね。