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長谷川昭雄さんと作ったピーコートの話

〈NAUTICA〉と長谷川昭雄さんによるコラボレーションが完成しました。それが、Aラインシルエットを描く、たっぷりとした作りのピーコート。そこに、長谷川さんは昔憧れていたコートのイメージを重ねていたようで。今回のMAGAZINEでは、当時の思い出とともにコラボアイテムの実像に迫ってみます。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。雑誌『MONOCLE』や『POPEYE』のファッションディレクターを歴任後、フイナムとともにウェブメディア『AH.H』を立ち上げる。2020年〈NAUTICA〉のクリエイションディレクターに就任。

長谷川昭雄さんによる〈NAUTICA〉のピーコートが今回のテーマです。まず目に付くのがボタンの数。2×5で10個のボタンが付いていますね。2×4で8個が一般的な気がしますが。

うん。俺の私物から(デザインを)引っ張ってきたんだけど、それは昔のピーコートをモチーフにしたもので、ボタン数が多くて、その間隔が詰まっているんだよね。

ボタンはピーコートの印象を左右する重要なディテールです。間隔が詰まっていることで、精悍な顔立ちになりますね。

そうかもね。

気持ち長めのハーフ丈も新鮮です。

前はスウェット上下でコートを着るぐらいが楽で良かったんだけど、ここ最近はハーフ丈もいいんじゃないかな?って思ってて。

コートというよりブルゾン感覚で着られそうですね。

うん。俺はよくジャケットを着ているんだけど、それは実用的で楽だからなんだよね。着丈がそれなりにあって、物も入る。やっぱり短い丈の方が使いやすいところはあるよね。

 

このアイテムは〈HERILL〉の大島裕幸さんがデザインをまとめています。ヴィンテージのディテールをお手本にしつつ、ボリュームのあるサイズ感に仕上げる、そのバランスに苦労したと仰ってました。

大島さんが上手くバランスを取ってくれたおかげで、いい感じに収まったよね。

 

くわえて、襟にも気を配ったと仰ってましたね。

 

俺はコートもジャケットも襟も立てて着る方が好きなんだよね。襟を畳むとカチッとしちゃうじゃん。その話を大島さんが覚えてくれていて、チンストを留めたときに、まとまるように設計してくれたんだ。

作りが大きいので、チンストラップを留めても窮屈な感じがしないですね。

 

ネック周りに余裕があるから、中にフーディーを挟んでもいいよね。普通、ボタンを留めてフーディーは着られないからさ。

まさにこのスタイリングがそうですね。

〈NAUTICA〉のラインナップからすると、このピーコートは少し異質なものだと思うんだ。シャツにしてもパンツにしても、ストリートやカジュアルへの落とし込みがあるけど、ピーコートってそうはならないじゃん。唯一あるとしたら、中にフーディーを着られるという点だよね。そこは新しさがあると思う。

なるほど。それは試してみたいです。

生地はウールのなかでも上質とされるジロンラムウールの二重織りメルトンを使っています。ソフトでハリのある質感が特徴ということですが。

生地のなめらかさとフォルムの相性がいいよね。大島さんっぽい感じがする。

ピーコート=重い、というイメージがありますが、これは軽さがありますね。

もっと軽い生地はあると思うんだけど、軽すぎるとフリースみたいになっちゃうからね。それなりに重さがあった方がいいよね。なんかの本に書いてあったんだけど、ある程度の重みがあった方が人は心地良さを感じるみたいだよ。

重い布団の方が安眠できる、なんて話もあるみたいですしね。

うん。重すぎるのも嫌だけど、だからといっても軽すぎてもね。やっぱり、ほどほどのところがあるよね。

細かい部分に目を向けてみると、4室のポケットは、それぞれ隠しポケットを備えたポケット・イン・ポケット構造になっています。

俺はバッグを持たないから、ちゃんとしまう場所がないと困ることがあるんだよね。今は持ち物が増えているじゃん。イヤホンとかサニタイザーとか。

ポケットが多いと小物が迷子になることがありますが、しっかり収納場所を決めておくとそういう心配もなさそうですね。

そうだね。

そして襟裏にはNAIJEL GRAPHによる国際信号旗で「NAUTICA」を表したタイベックタグが付いています。

最初は何もなかったんだけど、ちょっと渋すぎる気がして。もう少しふざけた感じがあった方がいいかと思って付けたんだ。

長谷川さんがピーコートを作ることに少し驚きました。あまり着ているイメージがなかったので。

90年代にあった某フランスブランドのピーコートに憧れがあってさ。人気アイテムだったから、入荷してもすぐ売れ切れちゃってて。高校生だったから、お金もなかったし、結局買えなかったんだけど。

それはどんなデザインだったんですか?

Aラインのシルエットで、今回ネタにしたようなアメリカ物の古いデザインをモチーフにしているやつなんだよね。一般的なピーコートみたいにピタっとしてなくてさ、すごくカッコ良かったよ。

見てみたいです。その後リリースされていないんですか?

うん、ないと思う。またアレ作ればいいのに。

では今回のピーコートは、長谷川さんの憧れを具現化したところもあるんですか?

うん。みたいなところはあるよね。

いい話ですね。高校生の頃の長谷川さんにプレゼントしたいです。