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NAIJEL GRAPHの手描き文字の話

先日リリースしたリバーシブルスウェットやシューレースに、そして現在発売中のニットキャップにも。NAUTICAが度々お世話になっているアーティスト、NAIJEL GRAPHをお迎えして、スタイリストの長谷川さんとのスモールトークをお届けします。ユルっとしながらも、ときにマジメに。長年のお付き合いの二人が繰り広げるトークをお楽しみくださいませ。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。雑誌『MONOCLE』や『POPEYE』のファッションディレクターを歴任後、フイナムとともにウェブメディア『AH.H』を立ち上げる。2020年〈NAUTICA〉のクリエイションディレクターに就任。

NAIJEL GRAPH

イラストやコラージュなどの手法を用いて様々な作品を制作するアーティスト。ビースティボーイズの写真集『Beastie Boys Book』のオフィシャルグッズの制作や海外での個展の開催など、幅広いフィールドで活動を展開する。

今回はNAIJEL GRAPHについての話なんですけど、その前に現在発売中のニットキャップの説明をさせてもらいますね。ワンポイントに、NAIJEL GRAPHのレタリングとフラッグロゴをあしらったものがあって、それぞれに被りが深いタイプと浅いタイプとで、計4型のリリースということで間違いないでしょうか?

うん。帽子は似合う/似合わないもあるし、スタイルによっての使い分けもあるから、沢山持っておいた方がいいよね。

 

たしかに。帽子は似合う/似合わないが服より明確な気がします。とにかく試してみないと始まりませんよね。

撮影の時もモデルには色々なものを被ってもらうようにしている。試しもしないで、この子にはこれだ!とはならないからね。

同じ形でもワンポイントが違うだけで、また違った印象になりますね。

そうだね。

今日はNAIJEL GRAPHのISSYさんに来てもらっているので、NAIJEL GRAPHのレタリングをあしらったモデルを中心に話を進めさせてもらいます。

よろしくお願いします。

ISSYさん、グラフィックの出来映えはいかがでしょうか?

なんかオフィシャル(のロゴ)っぽくて、いいですね。

これは、ISSYにAからZまでアルファベットを描いてもらって、それを〈NAUTICA〉のデザインチームが調整して作ったんだよね。

つまり、ISSYさんが“NAUTICA”と描いているわけではないんですね。

僕が全部を描いたらこうはならないですね。やっぱり癖もあるんで。ハセさん(長谷川さん)っぽい感じがして面白いと思います。

今回みたいにパーツを渡して後はお任せ、というケースはあるんですか?

今まではないですね。でもハセさんのことを信頼しているし、分かり合えているから渡せるんですよ。あと、自分が描いたものをハセさんにアレンジしてもらうのが楽しみっていうのもありますね。

最初(〈NAUTICA〉のデザインチームから)上がってきたものが、なんかしっくりこなくて。それでISSYに相談したら、文字の大きさや字間を調整すればいけると思いますよ、って言ってくれて。それであれこれ検証して、これに落ち着いたんだけど、結果誰のものでもないものになっている。でもベースはISSYっていうのが面白いよね。

いや、これはハセさんですよ。ハセさんフィルターが通っている感じがします。

文字組みをする上で、長谷川さんの狙いはどこにあったんでしょうか?

人が一所懸命書いたものなのに、デタラメに見えるところに面白味があるんじゃないか?って思っていて、そこを表現したいっていうのはあったね。ちゃんとして見えるものが面白くなかったりすることってあるじゃん。

それ、すごく分かります。

数年前、自分がやってきた過去の仕事を振り返ったことがあったんだけど、ページタイトルのほとんどが手書きだったの。俺はやっぱり手書きのものが好きなんだよね。癖が出たりとか、きちんと決まっていないものに惹かれる。だから、いわゆるフォントには全然興味ない。

え、好きなフォントとかないですか?

全然ない。全部同じに見える。

一同笑

手紙でも打ち込んでいるものより、手書きの方が伝わりますよね。

前にISSYに封筒のデザインをお願いしたんだけど、俺は字が汚いから、自分で(名前や住所を)書きたくないって言ったの。そしたら、ISSYがハンコにしましょうって言ってくれて。ハンコもさ、斜めになっちゃったり、かすれているぐらいの方が味わいがあるわけじゃん。やっぱり、人が上手く出来なかった瞬間の魅力ってあるよね。

ありますよね。

まず一所懸命やろうとしている姿がまず大事で、その上で失敗している姿は、すごく美しいんだと思う。このグラフィックもそういうことだよね。一所懸命やろうとした結果、ダメそうに見える。それが美しいんだよ。

ISSYさんは普段フォントを使うことはありますか?

たまに使うこともありますが、なるべく自分で描いたものだけで完結したいと思っています。やっぱりハセさんがフォントが嫌だって言っているのと同じ感覚なんですよ。

うんうん。

Macが出てきて、フォントを使った作業がすごい楽になったじゃないですか。その分、フォント離れも増えてきていると思うんですよね。例えば、この二人みたいに(笑)。

そこまでの意識はなかったけど、知らず知らずのうちにそう感じていたのかもしれないね。

この流れは今後も増えていくんじゃないかな?って思います。

よくデザイナーと話していると、やっぱこのフォントだよね。みたいな話になることがあるじゃん。

フーツラとか?

なのかな。全く意味が分からなくてさ。否定するとかじゃなくて、話している意味が分からない。一体何の話なんだ?って。

フォントは気持ちが伝わりづらいですよね。そこも責任を持って伝えたいという想いがあるから、手書きにこだわっているところはありますね。

俺が原稿を書きたいって思うのと一緒かもしれないね。

 

全くそうだと思います。

一方でフォーマルな話であったり、フォントが有効的な場面もありますよね。

余計なことを伝えたくない時とか、わりと一般的な物事を伝えたいときは、手書きよりもフォントの方がいいかもね。手書きにすることで変な感情を読み取られたり、意味が変わってきてしまうことがあるからね。

ありますね。

でも、そういう時に何のフォントを選べばいいのか分からないけど。

ISSYさんといえば、以前の長谷川さんへのインタビューで、『POPEYE』のデザインチームのバイトをしていたと聞きました。当時はデザイナーとして活動していたんですね。

単純に時給が良かったんですよね。それが、たまたま『POPEYE』だったっていうだけで(笑)。

俺は昔から『POPEYE』が好きだったけど、当時は(誌面が)全然良くなくてさ。フリーランスとはいえ、そこで食っていると、やらされる仕事が多いんだよね。

そういうことってありますよね。

例えば、バスケでもシュートを打たないといけない瞬間ってあるわけじゃん。

ボールが回ってきて、お前打て!みたいな。

うん。そうやって作らされるページがたくさんあってさ。このフォント、ダサいなぁとか思いながら、ISSYはバイトしてたんだよね。まぁ俺も同じようなことがあったし。

感謝はしていますが、納得いくものは作らせてもらえなかったですね(笑)。

その頃に俺たちが感じていた気持ちが、このグラフィックに込められている気がする。

 

いやーホントそうですね。

前々から、長谷川さんの作るページやプロダクトとISSYさんの作品はマッチすると思っていたのですが、その当時から二人の見ている景色が近かったんでしょうね。

ハセさんも僕もあの頃から作っているものは変わらないですよね。あの当時の『POPEYE』に関しては、なかなか難しかったところがあったけど、それじゃないところで作っているものは、今と同じですよね。

そうだね。人が興味を持つ対象って極端に変わらないからね。

ファッションも変わらないですよね。昔から太いパンツを履いていたし。

『MONOCLE』の仕事をしていたから、もう少しタイトな時期もあったよ。

そうでしたっけ?

それでも異質だったけどね。『MONOCLE』のスタッフで帽子をかぶっている人、俺しかいなかったし。

帽子はあまりかぶらないんですか?

うん、イギリス人はあんまりかぶらない。皆ちゃんと整髪している。

そういえば、お二人とも今日はニットキャップですね。

ISSYはニットキャップが好きだよね。

僕はセットするのが面倒だからっていうのがありますけど。

それは絶対にあるよね。俺もそう。でも大人になってもボサボサだと良くないから、帽子取れって言われても、それなりになるようにはしているけど。

僕、こんな格好で保育園に迎えに行ったりしているんですよ。他の親はせわしなくしてるのに、僕はのんびりやっているんですよね。「バイバイ」とか言ったりして。あいつ、何やってるんだ?って絶対思われていますね(笑)。

子供同士も話しているかもね。「パパ、何やってるの?」「パパはお絵描きしているよ」とかさ。

一同笑

最後にお知らせです。11月30日から代官山 蔦屋書店にてNAIJEL GRAPHの展覧会が始まります。新作キャンバスの原画やシルクスクリーン作品の展示販売のほか、MEDICOM TOYとのコラボ作品の先行受注もあるとのこと。これは見逃せません!

『New Paradise – STORIES BY YOUR SIDE -』
2020年11月30日(月)- 12月27日(日)
代官山 蔦屋書店(東京都渋谷区猿楽町17-5)
2号館1階 建築・デザインフロア