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2021 SPRING/SUMMERのこと(後編)

前号に続き、〈NAUTICA〉の春夏コレクションから、ディレクターの長谷川さんの目に留まったアイテムをレビューする「2021 SPRING/SUMMERのこと」をお届けします。後編となる今回は、往年のロゴを纏ったBDシャツとアーカイヴをアップデートしたブルゾンがテーマです。

新作コレクションの気になるアイテム、お次はなんでしょうか?

オックスフォードのBDシャツかな。

BDは前回ブロードとデニムの展開だったので、オックスフォードは今回初お目見えですね。

そうだね。

長谷川さんが惹かれた点というのは?

すごく地味な服だなぁと思ったんだよね。というか、コレクション全体的に地味なんだけど。

でも、一つ一つを見るとシンプルで着やすいし、わりと色々なタイプの人が自分のスタイルに合わせられる服が揃っていると思う。中でも一番シンプルで着やすいのが、このBDシャツなんじゃないかな。

まさにシンプルの極み、といったところですが、個人的にはロゴの刺繍が気になりました。これは、80-90年代のブランドアイコンですよね?

そう、ヨットのロゴを入れてみたんだ。過去の〈NAUTICA〉に囚われすぎないように、前回はあえて使わなかったんだけど、今回のコレクションは〈NAUTICA〉らしさを盛り込んでいきたいと思って。その象徴が、このヨットのマークなんだよね。

胸元にではなく、裾に入っているんですね。

アイテム一つ一つに対して、どこにデザインを入れるべきか、時間をかけて話し合っているんだ。グラフィックをプリントした紙をアイテムに貼って検証する、というのは散々やったね。

以前、(加藤農園の)加藤さんも「ワンポイントは奥が深い」と言ってましたね。

あーそんなこと言ってたかも。でも、本当にそう思うよ。デザイン位置はアイテムによっても変わってくるし、グラフィックのデザインによっても変わってくるからね。

生地は中肉のオックスフォードを使っています。柔らかくてコシがあるので、フォルムも出やすそうですね。

生地の厚みが丁度いいよね。オックスフォードで厚すぎると安っぽく見えるし、薄すぎると頼りなく感じてしまう。あとフォルムも出にくいからね。

丁度いい、というと、襟の設計も普通でいいですね。

うん。ネクタイを締めるシャツではないから、襟をキッチリ作っちゃうと変な感じになるよね。飾りとしての襟としてはいい感じだと思う。

大きな主張はありませんが、あらゆる点で“丁度いい”が行き届いている気がします。

基本に立ち戻る感じがして、すごく気持ちがいい服だよね。

最後は、コットン/ナイロン素材のブルゾンですか。

うん。これは過去のアーカイヴを元に作ったんだよね。

どうりで。なんだか懐かしい感じがしました。

この襟のデザインがいい感じだよね。〈NAUTICA〉らしさがある。

分かります。そして襟の中にはリフレクターのフードが収納されていますね。

このフードもいいよね。俺、リフレクターがすごく好きで、一時期よく集めてたよ。

これは、アーカイヴにはない味付けですよね?

そうだね。

アーカイヴからのアレンジとして、他にはどんなところがありますか?

大きいところだと、着丈かな。アーカイヴにある〈NAUTICA〉のブルゾンは、丈がすごく短いんだよね。

そうなんですか。

90年代の服って、今の感覚からすると、丈が短いものが多かったと思うんだよね。だからビッグポロ( 注:90年代に〈Polo Raplh Lauren〉が発表したオーバーサイズのコレクション)も、丈が長いせいで、全く新しいものに見えたよね。

たしかに。

それぐらい、皆が丈が短いものに目が慣れていたんじゃないかな。

その点、これはバランスのとれた設計ですね。

着やすいかたちになっていると思う。ブルゾン丈って難しいからさ。短すぎても着づらいし、長すぎるとブルゾンの良さが損なわれてしまうし。

なるほど。

あとブルゾンは裾の処理が難しいよね。例えば、MA-1だとリブが入っているじゃん。あのリブのテンションの調整が難しいんだよね。着る人によって変わってくるし、合わせる服によっても変わってくるからさ。これはスピンドル(注:裾に付属するヒモ)で調節できるから、着る服に合わせて、着丈を変えられるからいいよね。

カラーはネイビーの単色とネイビーボディにホワイトの切り返しが入った2色展開です。どちらも使いやすそうですね。

他の色もあった方がいいんじゃない?って思ったこともあったけど、これ以上に着やすい色はないからね。結果、バランス良く収まったんじゃないかな。

生地のテクスチャーもいいですよね。

ツルッとしていない感じが、90年代のジャージっぽいよね。光沢があると、2000年代っぽくなる。あれはあれで好きなんだけど。

90sライクなデザインには、ぴったりなマテリアルだと思います。

そうかもね。

写真の彼みたいなショーツとの合わせも90年代的です。この感じ、今改めて新鮮ですね。

うん。

というわけで、春夏コレクションから長谷川さんの気になるアイテムをピックアップしてみたんですが、改めて今回のコレクションを振り返ってみてどうですか?

前回は、これまでの〈NAUTICA〉らしさを打ち消したいという思いがあったんだけど、今回はそういうものを出していきたいと思ったんだ。でも過去に作ったものを、ただなぞってもしょうがないからさ、そのバランスは意識したかも。

らしさを出しつつも、ただの焼き直しにならないように、ということですかね。

そうだね。

これから続々と春夏物がお店に並びますが、またどこかの機会で話を聞かせてください。

うん、是非。